理想のミッドレンジ
自ら理想形のスピーカー・システムを目指して製作した「STS-Limited」に採用したユニットの候補には数年の期間をかけて選考をしてきた。
結果、スピーカーの中核となるミッドレンジには、「Scanspeark 18WU/4741T00」が選抜され、そのユニットの性能を最大限に活かすためにミッドレンジ用の石材による消音管型エンクロージャーとしてストーン・チューブを設計・製作をした。
ストーン・チューブが完成後、「Scanspeark 18WU/4741T00」を搭載してチューニングを始めたのであるが、せっかく製作をしたストーン・チューブなので、ユニットの選考過程で次点となった「Accuton C173-6-096E」についてもバッフル板を製作してストーン・チューブに搭載して比較試聴をしたところ、評価が逆転したのであった。
「Scanspeark 18WU/4741T00」より評価が上がった理由については、ユニットの選考過程で使用していたバッフル板はMDFを使用した環境での評価であったので、石材の付帯音の少ない環境に変えたことで評価が変わったものと考えている。
Accutonのユニットは、大変トランジェントが高いユニットであるが、下手な使い方をするとセラミック特有の硬質なサウンドになる傾向があるが、ストーン・チューブのエンクロージャーでは、付帯音を抑える結果が評価の逆転した要因だと思っている。
しかし、「AccutonC173-6-096E」は、T/Sパラメーターによるシミュレーション特性表のとおり、500Hzを境にSPLが下がり始めるので、止むなくウーファーのクロスオーバーを300Hzまで引き上げてバランスを取っていた。
幸いストーン・ウーファーの「Accuton-AS-250」は、アルミのハニカム・コーンで上限を300Hzまで引き上げてもウーファーのもたつきもなく反応速度の劣化は感じさせない中低音を奏でてくれる。
しかし、ストーン・チューブの開発コンセプトは、ミッドレンジの再生下限を100Hz前後までほぼフラットで再生させることで、ウーファーのポートから出てくる逆相の中音域を極力下げることをコンセプトにしていたのであるが、「AccutonC173-6-096E」では、当初の開発コンセプトを達成出来ていないことが今日まで負い目になっていた。
しかし、今年導入したTRINNOVによる音響補正で「Scanspeark 18WU/4741T00」のユニット構成によるシステムの評価が再び逆転することになったのである。
すなわちTRINNOVによる音響補正をしないスピーカーシステ厶の基本性能はAccutonシステムが優位だが、音響補正をかけるとScanspearkシステムが優位になるという結果になったのである。
Scanspearkシステムは、Accutonシステムと比較して300〜100Hzまでの中低音に厚みが出て素晴らしい雰囲気と中高音についてもペーパーコーンとは思えないトランジェントも両立してジャンルの隔たりを全く感じさせない魅力的な演奏を聴かせてくれる。
TRINNOVの音響補正によって、どちらのユニット構成の組合せもほぼSPLはフラットになる様にTRINNOVの逆補正フィルターで補正されているにもかかわらず、かなり中低域の厚みに違いが出るのである。
これをユニットの違いといえばそれまでだが、TRINNOVは、スピーカーの基本特性をリスニング・ポイントで計測をしてSPL等をフラットに補正する逆補正のフィルター特性を生成するが、その逆補正特性にどこまでスピーカー・システムが忠実に反応できるかで結果が異なるこということである。
すなわち「AccutonC168-6-096E」は、500Hzから音圧が下がる特性なので逆補正フィルターの通りのに反応ができず、「Scanspeark 18WU/4741T00」は100Hzまでフラットに再生できるポテンシャルがあることから、逆フィルターにより正確に補正後の特性に補正することが出来たことが評価が逆転した要因であるといえる。
TRINNOVは素晴らしいポテンシャルを持っているが、リスニング・ポイントで最適な特性になるように逆補正フィルターのパラメーターを生成してイコライジングするが、実際にリスニング・ポイントのサウンドが補正後の特性になっていることを保証するものではないことから、結局スピーカーの基本特性の優劣が問われることになるということである。
今回の逆転結果は、スピーカーの基本特性をおろそかにして、TRINNOVに任せて補正による効果を期待しても、基本性能が劣っているとTRINNOVの補正後の特性にはなっていないことを実証した結果だと思っている。
そんな実情から、ここ2年ほどAccuton製のミッドバスで100Hzまでフラットに再生できるユニットの登場を望んでいたが、1年ほど前に期待の新ユニット「C168-6-890」というCELLコンセプトのモデルが発表され、そのT/Sパラメーターからストーン・チューブでほぼ100Hzまでフラットに再生できるモデルであることが判明していたのであるが、その期待のモデルがようやく輸入可能となり先般拙宅に届いた。
各ユニットのT/Sパラメーターによる特性表を掲載した通り、Accuton「C-168-6-890」は、小生の求めている理想の特性を示しており、いよいよ「STS-Limited」から「STS-Ultimate」ヘのバージョンアップに相応しいユニットが揃い、これからバッフル板の製作の検討に入りたいと思っているが、既に「STS-Ultimate」と評価出来るまでに高次元のサウンドを奏でているだけに、そのサウンドを凌駕することはかなり難しいことも想定されるとも思っている。
大阪ハイエンド・オーディオショー2019の感想
大阪ハイエンド・オーディオショー2019に行ってきた。
ドイツAccutonブランドのファンとしては、オールAccutonユニットで構成されたエストニア製ESTRONというスピーカーメーカーのトップモデルFORTAを聴いておきたかったからである。
ショーは3日間開催されていたが、今年は2日目の1日のみ主なブースを聴いて回った。
その中で注目したのが、AXISSのブースで演奏されていたFYNE Audioのスピーカーである。
FYNE Audioは、スコットランドに拠点を置き、TANNOYに30年も在籍していたテクニカル・ディレクターのDr. Paul Mills氏を中心としたメンバーが起業したメーカーで、発売と同時に人気が出たことから短期間にいくつもの価格帯のラインナップを揃え、日本には昨年進出したブランドである。
TANNOYの伝統的な2Wayコアキシャル・ユニットと同様のコンセプトのユニットを搭載し、スピーカーの底面に四方ヘ開放されたポートを持つユニークなポート構造を持っている。
小生もタンノイのオートグラフなども使ってきたが、ユニットのコンセプトとしては、その延長線上にあるユニットであるが、ネオジウム・マグネットや特別なエッジを採用し、振動板も様々な点を改善するとともに、エンクロージャーについてもバッフル回析を重視した形状を採用している。
その成果があって、従来のTANNOYのスピーカーでは聴けなかった抜けがよく、明るいサウンドを再生することから、しばらくそのサウンドに魅了されて2時間くらいブースを離れられなかった。
一番廉価なモデルは、ペアでも10万円を切るが、その廉価なモデルを2,000万円近いFMのプリとパワーアンプでドライブする場面があったが、とても小型スピーカーとは思えないサウンドには驚かされた。
ここ数年、ひと昔前の小型スピーカーでは、ありえないほどリアルなサウンドと低音再生についてもボイスコイルのロングストロークへの対応で驚くほど低いレンジもカバーできるようになった。小生はその改善の背景に音響解析技術の進化が大きく貢献していると思っている。
しかし、小型スピーカーでは80Hz以下の重低音再生には限界があるので、低音を補強すべくウーファーを追加したラインナップも多くあるが、せっかくの中高音の良さを壊しているモデルも少なくない。その意味でこの上質な中高音の良さを損なわず、さらに良さを改善するレベルの重低音再生には、依然として相当なコストをかけないと実現できないと感じさせられた。
FYNE Audioのミドルクラスの製品も残念ながら、折角の中高音の良さを損なっているように感じた。
最後に広い会場で、今回のショーで試聴を期待していたエストニア製ESTRONのトップモデルFORTAの演奏を聴いた。
大理石の粉末を樹脂で固めて整形した大型のエンクロージャーにトランジェントの高いオールAccutonのダブルウーファー構成ということもあって、広い会場でもダイナミックでプレゼンスを伴ったサウンドを聴くことができたが、低音の質に関しては、拙宅で使っているAccutonのAS-250のトランジェント良さを発揮できていないとの感想を持った。
日本ではあまり知られていないがエストニアでは、ESTRON以外にもマルチアンプ構成の超弩級スピーカーを製作しているメーカーもある。
いずれにしても昨今、再生音楽の要となるスピーカー・システムは、サウンドの良さといい、デザインの良さも含めてヨーロッパ・メーカーの独壇場になっている感がある。
ラグジュアリーなMyu邸のオフ会
Myuさんとは、ドイツThiel&Partner製のAccutonユニットのユーザー仲間として、かなり以前からブログ上で交流があるなかで、昨年の6月には千葉のゴンザエモンさんと共に拙宅のSTS-Limitedを聴きに来られて初めてお互いに面識を持ったメンバーである。
そして、STS-Limitedに搭載したウーファーであるAccutonの新型ウーファー「AS-250」のポテンシャルに共感されたMyuさんは、その後に同じユニットを購入されたであった。
ユニットを購入後、かなりの時間をかけてエンクロージャーの構想を練られ、先般ようやく自らエンクロージャーを製作され、ようやくウーファーの音出しが出来る運びとなった。
まだエンクロージャーの外装は、これからの段階ではあったが、早速にゴンザエモンさんからMyu邸へ1泊2日のオフ会への招待メールが届いた。
ゴンザエモンさんは、Myu邸を定期的に訪問されてきたようだが、小生は初めての訪問であったが、いつかは訪問したいと思っていたこともあって、早速に訪問日程の調整に入った。
Myu邸は伊豆半島の伊東にあり、周辺が森林のような立地の別荘地で、オーディオのオフ会だけではなく、近場の天然温泉に入って、ワインを飲みながらイタリアンを食して好きなアルバムを聴くという、まさにラグジャリーなオフ会に参加させていただいた。
初日は京都から新幹線の熱海駅で下車してからJR線でゴンザエモンさんと合流して伊東駅に到着してMyuさんが迎えに来られていた。
Myu邸に向かう途中、3人でランチを済ませてからMyuさんのリスニング・ルームに案内して頂いた。
いつもブログで拝見している定在波の軽減に適したユニークな太鼓型エンクロージャーが迎えてくれた。
太鼓型エンクロージャーは、ブログで拝見しているより立派な作りで、中太鼓位のしっかりとした大きさであった。
到着後、早速にPCオーディオのスペシャリストであるゴンザエモンさんがPC上にNASサーバーを構築して、直ぐにネットワークオーディオ環境が出来上がった。
早速にそれぞれ持ち込んだアルバムを聴かせて頂いたが、一聴して普段聴き慣れたAccutonサウンドで、バランス的にも違和感を感じさせないサウンドが鳴り始めた。
全体に吸音がなされて天井高も高くて平行面のないリスニング・ルームは、拙宅に比べて圧迫感のない印象で、拙宅ではここまでストレスのないサウンド再生は難しいと思わせるサウンドであった。
小生の最大の関心事は、やはり拙宅のストーン・ウーファーで採用したウーファー・ユニットであるAccutonAS-250が強固な30mm厚のフィンランドバーチで製作された密閉型のエンクロージャーで、どのような低音を再生してくれるのかということであった。
Myuさんが製作されたウーファーは、80Hz以下を受持つサブウーファーとして設定されていたが、持ち込んだ低音確認用のアルバムも予想通り、充分な重低音再生を聴かせてくれた。
エンクロージャーの素材が、石材か硬い木材の違いまでは評価を出来なかったが、AS-250のポテンシャルは並外れたポテンシャルを持っていることは確かであることを充分に確認できたと思っている。
初日の夕方になってから近場の温泉に行って温泉に入ってから、徒歩で行ける小洒落たイタリアンレストランでゆっくりとディナーをいただいた。
別荘地の森林を通って戻り、再びお気に入りのアルバムを聴いたり、多分、この3名でないと通じないくらいのオーディオ談義に熱が入り、気が付いたら深夜2時を過ぎていたので、話も切り上げて就寝することにしたのであったが、Myuさんもブログで感想を述べられている通り、多くのオーディオファイルの中でも、これほどに音楽の嗜好やオーディオに関するアプローチやサウンドの指向も近いメンバーは、希ではなかろうかと思う。
翌日は、Myu邸周辺の別荘地近くの「一碧湖」周辺を散策してから、すてきなコーヒーカップが沢山コレクトされたコーヒーショップで朝食をとった。
朝食後2日目のオフ会を昼過ぎまでしてから、これまた近くの蕎麦屋さんで昼食を済ませてから帰路の準備に入った。
いままで様々な場所でオフ会をしてきたが、今回のように森の中に立地したラグジャリーな雰囲気のオフ会を初めて経験をさせて頂いて改めて、今回お誘いをいただいたゴンザエモンさんとお世話になったMyuさんに感謝申し上げたい。
来年の季節が良い頃に、Myu邸の周辺環境には及ばないが、京都にて新型AccutonのCELLユニット(C168-6-890)を搭載したSTS-Limitedの最終形となるであろうSTS-Ultimateの試聴をメインとし、ちょっとラグジャリーなオフ会を企画してみたいと思っている。
オーディオ史の後編
永年格闘してきた、JBL-4350Aから、様々なホーン・システムやダイレクトラジエーター型ユニットの試聴を経て、現在の完全オリジナル・ストーン・スピーカー(STS-Limited)の製作に至った経緯を記事にまとめました。
2006年8月号の「HiFi追求リスニングルームの夢」No.496号に掲載されてた以降の13年間にわたる取組みを小生のオーディオ史の後編として簡潔にまとめることができたと思っています。
詳細は、MJ「無線と実験」11月号を購入して「HiFi追求リスニングルームの夢」No.606号をご覧いただければ幸いです。
【2006年8月号掲載時のブログ記事】
https://audio.fc2.net/blog-date-200608.html#container
TRINNOVのポテンシャル
TRINNOVが真価を発揮しはじめた。
残る課題であるオーディオ・ルームの定在波軽減対策として、TRINNOVの優れた音場補正機能に期待して導入した「ST2-HiFi」も導入後3ヶ月が経過した。
2年程前にST2-HiFiを借りて試聴した際には、すぐにサウンドが向上し、その補正機能のポテンシャルに驚かされたのであるが、あれから2年近くの時が経過し、STS-Limitedのドライブ環境のレベルアップで基本性能も相当に改善されたこともあって、「ST2-HiFi」の導入後、直ぐには効果を発揮させることができなかった。
導入後、様々な設定を試して補正範囲を200Hz以下の低音域に補正を限定して、ようやく導入効果を実感できる様になったのであるが、フルバンドの補正では高域がきつくなり、良い結果が得られなかったのである。
そんな中、8月の上旬にオーディオ・ルームのエアコンが故障をして、その取替工事でスピーカーの移動が必要となり、その移動に伴って音響計測をやり直すことにしたところ、計測マイクの高さを設定していたゲージの表示が、リスニング・ポイントにおける耳の位置より10cm高いことが判明した。
TRINNOVは、計測位置の違いにによっては、かなり敏感に変化することは分かっていたが、耳の計測位置が10cm高く設定されていたことが判明した。
この計測位置の10cm差がどのような変化が出るのか不明であったが、試聴を始めてかなり印象が良くなっていることが実感できた。
計測ポイントの変化によって、当然に逆補正のパラメータも変化しすることで、フルバンドの補正がもっとも自然な印象に変化したのであった。
この結果は、如何にTRINNOVが正確に計測し、逆補正のパラメータを生成しているかの証ともいえるが、改めてポテンシャルの高さを認識させられた。
計測した特性は、今までと大きく変わるようには見えないのであるが、STS-Limitedは僅かな変化でも大きくサウンドが変化するので、まさに補正後のカーブの通りのフラットなバランスを実感できるサウンドになった。
STS-Limitedの高い基本性能に加え、オーディオルームの音響補正効果も加わって、現状では、もうこれ以上の改善は考えられないサウンドレベルに到達したと実感している。
この音響補整のモードで、早速に「T」さんに試聴を願ったが、「高い鮮度はそのままに低音の厚みも増して万人受けするサウンド」との評価を得た。
まだまだ導入後、日も浅いことから、より一層に計測上の精度に注意を払い、まだまだ試せていない機能もかなりあるので、スピーカーの基本特性の向上にも配慮しながら、TRINNOVとのコラボレーションを追求してみたいと思っている。







































