OK邸 訪問記 その3 最終
小生はオーディオ的に関心の高いシステムのオフ会には必ずと言っていいほど、訪問先でも自身で持ち込んだ音源を聴かせてもらっている。
訪問先のお気に入りのアルバムを聴かせていただくだけでは、拙宅のシステムとのニュアンスの違いを比較評価出来ないからである。
特に注目している場合は、訪問先で拙宅との違いをより鮮明にするために、事前に拙宅でも持ち込む音源を聴き込んでから訪問することにしている。
今回も大いに期待していたシステムだけに、再生機材もOK邸と同じBlusound Node2iに切り替えて拙宅のSTS-Ultimateで充分に聴き込んでからの訪問となった。
OK邸に到着後、早速に機材の説明を受けて、OKさんのお気に入り音源の再生もそこそこに、小生が持ち込んだ音源で、あたかも拙宅のシステムであるかのごとくにi-Padを操作して、評価用の音源を思うままに聴かせていただいた。
まず高域の印象は、新型のBlieSMaのベリリウム・ツィーターもAccutonの技術者が開発に携わっていることもあってか、ベリリウムの固有音もほとんど感じられなかった。
ミッドバスについても、Purifi audioのペーパーコーンでフェライト・マグネット仕様のユニットとは思えないトランジェントで、海外ではAccutonのペーパーコーン版との評価を得ているということもうなずける。ビッグ・バンドの激しいドラムスも、ペーパーコーンらしからぬ、まさに圧巻のトランジェントで聴くことができた。
期待の低音の質感であるが、試聴を開始したごく初めは低音がブーミーな印象を受けたので、難しいサブウーファーとの不整合かとも感じたのだが、OKさんにサブウーファーをドライブしているFA501内臓DSPの設定音圧を2dB下げてもらった。
設定変更してからは、重低音までシームレスな印象で、密閉型のエンクロージャーによる圧迫感やデジタルアンプ駆動の力不足の印象もなく、重低音の再生能力を確認するために持ち込んだ部屋を揺るがすような重低音の音源もストレスなく再生することが確認できた。
小生は密閉型のエンクロージャーの多くに低音の下限まで伸びきらない閉塞感を感じてきたので、拙宅のSTS-Ultimateでは密閉・開放のどちらにも可変できる構造にしており、現在はエンクロージャーの内圧を抜く程度に開放している。
ドライブされているデジタルアンプについては、拙宅でもパワーアンプの更改検討段階で、これからはデジタルアンプの時代との思いもあったので、低音再生用にHypex のNcoreモジュールの最新パワーアンプを借りて試したことがあった。
しかし、低音に力強さを感じられなかったので、現在のアナログアンプに更改した経緯があった。
デジタルアンプは、アナログアンプに比較してダンピング・ファクターがかなり高いためか、中高音域をアナログアンプとした混合の構成では、低音がスカスカの印象になったとのOKさんの感想を聞いたが、小生も同様の印象で、中高音と低音ともにダンピング・ファクターが揃ったフルデジタル・パワーアンプ構成によって、密閉型であるウーファーでも閉塞感を感じることももなく、最低域まで伸びている印象で、今まで感じてきたデジタル・アンプの力不足を感じることもなかった。
またOKさんによるデジタルアンプのDSPによるフィルターの巧みな設定で重低音の過度特性を向上させる狙いどおりの効果も貢献しているとも思われる。
本当に質の高い低音再生には、古今を問わず並々ならぬ熱意と物量の投入に加え、その時代の最新技術も駆使するのであるが、誰もがその次元に到達出来るものではない。
最近では、小型サイズのスピーカーでも、従前では考えられない程の低音再生能力が高いスピーカーが登場してきたが、重低音領域までの再生に必要な数10Hzの低音域の質の違いが、如何に大きい要素であることをOKさんも実感されてきただけに、その実現のため半端ない熱意と設計スキルで取り組んで来られた成果は狙いどおりに達成されたと思う。
持ち込んだ音源を次々に聴きこんでいく中で、いつの間にかアルバムにおける音楽表現の違いや弱点を探っても、ほぼ拙宅のSTS-Ultimateに肉薄したサウンドの印象で、後半には持ち込んだ音源を聴かなくても、どのように奏でるのかが分かる位で、あたかも拙宅で聴いているような錯覚さえ覚えような感覚で聴いている自分に気づくのである。
今まで様々な訪問先でオーディオ・システムを聴かせていただいてきた経験の中で、システム構成やリスニング・ルーム環境も相当に異なるので、当然に持ち込んだ音源のニュアンスが違って聴こえるのは当然のことと思ってきた。
そしてその違いにこそ新しい発見もあるものであるが、ここまで印象が酷似したサウンドを聴くことになるとは訪問前には思ってもみなかった結果となった。
この結果は、間接的に拙宅のシステムにおけるポテンシャルの高さも裏付けることにも繋がるので嬉ばしいことなのであるが、ストーン・スピーカーも誕生後、ほぼ3年が経過するなかで、駆動系やユニット変更、クロスオーバー設定変更も含めてバージョンアップを繰り返し現在に至るが、まだ誕生して間もないOK邸のシステムが、既に到達している次元の高さに驚くのである。
これはOKさんの見識とスキルの成果として到達した結果であるが、どちらのシステムも現代の優れたユニットを世界から調達し、それぞれのリスニングルームでその性能を最大限に発揮させることで、同じ次元のサウンド・レベルに到達し、結果として同じ印象を受けたということではなかろうかとも思っている。
また、バランスが固定された市販のスピーカーとは異なり、それぞれのリスニング・ルームでオーディオの中核ともいえるスピーカーをオーナーの感性で最良のバランスに追い込める自作ハイエンド・システムならではの結果であるとも思うのである。
OK邸訪問後にあたらめて拙宅で持ち込んだ音源を聴き込こんだのだが、スピーカー配置の間隔やリスニング・ポジションの距離、ドライブ系機材のS/N比やノイズフロアーの違いもあってか、確かにサウンド・バランスは肉薄するものの、拙宅のSTS-Ultimateで聴く音楽がより空間再現や音場表現に優れていると感じられた。
今までに様々な訪問先でハイレベルなサウンド聴かせてもらって、しばらく拙宅では聴く気にならないということが過去には何度かあったが、そのショックが自身のシステム改善の原動力になってきた面もある。
その意味では今回の訪問では、OKさんのシステムが拙宅と同一次元のレベルに到達しているという確認ができた一方で、ユニット構成の違いはもとより、アナログアンプとデジタルアンプのドライブ環境の違いやネットワーク方式、マルチアンプ方式などのクロスオーバー環境の違いなど、大きなシステム構成の違いがある中での結果が意味するところも大きいと感じているので、今後、拙宅の再生機材の構成変更も試してみたいと思っている。
OKさんのシステムは、現時点で彼の可能な限りのノウハウを投入したものの、まだ誕生したばかりで、OKさんの年齢で到達したサウンドレベルは、今後彼が小生の年齢になる頃にはどのような次元になっているのであろうか。
今後もこれでじっとしているOKさんではないので、新しいユニット採用ヘのチャレンジや駆動系の再構成など、様々なブラッシュアップがなされていくであろうが、どこまで進化していくのかも注目をせざるを得ない。
そしてその過程で、小生もまだ聴いたことのない未知のサウンド領域へ到達し、ますます高齢化していくであろう小生の耳が正常な聴覚を維持している間に聴かせてもらえる日を楽しみにしている。
コメントの投稿
No title
スピーカーの設計に関して少し補足させていただきます。今回のスピーカー設計の肝はミッドレンジとウーハーのクロスオーバー設計思想です。ローカット無しの2ウェイ+サブウーハーの構成に見えますが、ミッドレンジに関してはQ=0.5となるエンクロージャー容量をT/Sパラメーターから算定し、メカニカルに-12dB/oct(Linkwitz–Riley2次相当)のローカットフィルターがかかるように設計しています。通常のユニットでは電気的なハイパスフィルターを挿入しなければ低音の過振幅によりミッドユニットに歪が生じてしまいますが、Purifiのロングストロークかつ驚異的に低い混変調歪特性により、電気的なハイパスフィルターを通すことなく3ウェイの構成が可能になりました(コンデンサーを通さない音質的メリットが期待できます)。
今回の設計では正面軸上の周波数特性の平坦性に拘り、主要帯域で±1㏈程度までは達成できましたが、反省点としては軸外特性までは追及できなかったことです。正面軸上の特性を追求するあまりB&Wの様なちょんまげスタイルのツイーターハウジングになりましたが、この構成ではミッドユニットからツイーターへの移行領域で指向特性の不整が生じてしまいます。軸外特性はステレオイメージングや音場感の再現に影響がある様ですので、今後の課題としては軸外特性にも考慮し、スピノラマを用いてスピーカーの設計や評価をすることにいたします。幸いなことに音質改善のアイデアは次から次へと湧いてきますので、今後の改善に乞うご期待という事でよろしくお願い申し上げます(笑)。
No title
>幸いなことに音質改善のアイデアは次から次へと湧いて来る
と言い切れるところが凄いですね。
ただ、改善の手法が小生の思考範囲を超えているので、その成果・ノウハウはすぐに適用させてもらいますので、これからも宜しくです。(笑)