バッフル板のリニューアル その1

 ストーン・スピーカーのミッドレンジ用ストーン・チューブとツイーターのハウジングに装着しているバッフル板は、米国デュポン社のコーリアン(通称:人工大理石)を採用しているが、STS-LimitedからSTS-Ultimateへユニット変更してバージョンアップした際にバッフル板も最新ユニット用にリニューアルするつもりであった。
 しかし、新たに設計したバッフル板の加工を請け負ってくれる業者が見つからないことから、やむなくSTS-Limitedのバッフル板を追加工して使ってきた。
 特にダイヤモンド・ツィーターのBD30-6-458Cell-Conceptモデルは、ユニットの形状が大きく変わったのであるが、旧モデル用のアダプターを介して取付けていたので、これもスッキリ収めたかった。
ストーンチューブ 

旧ツィータバッフル板


旧ミッドバッフル板


 今までコーリアンでバッフル板の制作を依頼してきた業者では、バッフル板の周りをバッフル効果の改善するためのアール形状に加工をすることができないことから、金属での制作も含めて検討してきたが受託加工先が見つからないまま今日までリニューアルを先送りしてきた。

 そのような経緯のなかで、ストーン・スピーカーが世界的にも稀な石材のエンクロージャーを採用したスピーカーの成功例として「スピーカー技術の100年」に掲載していただけるとのことなので、何とかこの機会に当初の構想通りのバッフル板にリニューアルすべく本腰を入れることにした。
新ツィータバッフル板図面
新ミッドバッフル板図面

 コロナ前になるがブログ繋がりで知り合ったMilesTADさんは金属加工には詳しいことから金属製のバッフル板の制作も打診したが、相当な重量になることから旋盤加工では困難であるとの判断から金属製のバッフル板の制作は断念し、材質も従来どおりコーリアンで、さらに強度を上げて制作することにした。

 以前、今は廃業された「麻布オーディオ京都」の野中氏から聞いていた3次元の木工加工業者を思い出し、そこに制作を打診することにした。


 この業者は木工が中心ではあるが、NCルータの活用よる三次元加工を得意とされている業者で、硬い木材に近いコーリアンの加工も可能なのではないかとの思いから打診したところ、過去に加工の実績があるとのことで設計図面をもって工場を訪問することにした。

上谷木工:https://www.uetani-mokkou.com/
 工場の場所を調べて驚いたが、拙宅から自転車でも行ける場所なのである。
 社長にアポイントをとって、工場を訪問したところ、木製の招き猫や裸婦像の立体加工の試作品が置かれおり、加工技術の高さに期待が膨らんだ。

 社長と面談して設計図面を見せたところ、スピーカーのバッフル板であるとすぐに理解していただけた。
 木工加工業者ということで、以前にもスピーカー・エンクロージャーの制作依頼を受けられ、ラウウンド形状のエンクロージャーの受託制作されたようで、試作品のエンクロージャーも置かれており、そこで曲げられる合板が存在することも知らされた。

 当社で加工が出来なければ日本では加工できる所はないとの社長の言葉に、並々ならぬ加工技術に自信も持たれているようであった。
 ここ何年もバッフル板のリニューアルに普請してきた問題が、拙宅から目と鼻の先にある業者で解決できるとは思ってもみなかった。

 設計図面の説明をして見積もりを出していただくことになったが、本業は木工加工なので指定した色のコーリアンの材料調達から始めなければならないということで、完成までに最終的には2ヶ月以上の期間を要した。
新バッフル板1

新バッフル板板2


 コーリアン製のバッフル板を石材に固定するためには、石材に打ち込まれたPCカールピースに木ネジで固定するのであるが、その取り付け穴の位置が左右とも数ミリの誤差があるので、穴の位置を現物からフィルムに位置を転写して指示をする必要があった。
 1mmでも狂えば取付け用の木ネジが入らないので、最も気を配ったところである。

 バッフル板のリニューアルを機に強度を上げるために厚みを倍増した。
 コーリアンの標準的な厚みは12mmなので、STS-Limitedではその厚みにしていたが、ロックの激しい音源ではバッフル板に振動が感じられることがあったので、今回は2枚重ねにして倍の厚みの24mmにした。
 又、ミッドレンジのユニットの配置を同心円の位置からずらして配置した。
 これは佐伯多門氏が来られた際に、氏が永年勤務されてきたダイヤトーンではバッフル板へのユニットの同心円配置は禁じ手となっているとの指摘があり、その指摘を受けて後日バッフル解析をしたことがある。
 バッフル解析の結果、3,000Hz以内では問題はないとの結果であったが、現在のクロスオーバーは、3,550Hzになっているので可能な限りミッドレンジのユニットをバッフル板の中心からずらす配置とした。
 コーリアンは加工をすると細かい傷で白っぽくなるので、今までは艶出し塗装をしてきたが、今回は15,000#のサンドペーパーで磨き込んで床用のワックスで光沢を出す方法を採用した。
新バッフル板3

新バッフル板4


新バッフル板5

 バッフル板への取付けに使用する木ネジも皿形状の木ネジを採用してバッフル板から飛び出ない形状にした。
 一部ミッドレンジのユニットの取付けの為の追加工をしてユニットを取付けて、最も微妙なバッフル板への取付けも、ツィーター、ミッドレンジとも見事に狂いもなく取付けることが出来た。

 

改めて小生の追求する理想のスピーカー制作への思いを受け止めてくれる人達との出会いの結晶として、このストーン・スピーカーが誕生したのだと思うと感慨深い。
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No title

まつさん、


ついにここまで辿り着いたのですね!?

僅かな妥協をも見過ごさないという気合によって、さらに精悍になったように見受けられます。
最終の仕上げに向けて調整の過程なのかもしれませんが、もうビンビンと音の感触が伝わってくるようです。

いずれ拝聴させていただける機会を楽しみにしております。

No title

ゴンザエモンさん

コメント、ありがとうございます。
当初、加工精度と仕上がり具合に不安もありましたが、思っていた以上によく仕上がったと思っています。
その2で掲載の予定ですが、サウンドの質も向上しました。

是非、機会をみてオフ会で評価をして下さい。
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Author:京都のまつ
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